米国の早期の利上げ期待が与える為替への影響とは
平成28年8月8日、アメリカの雇用統計が発表されました。この雇用統計では、アナリスト(市場分析者)が予想した数値よりも上回る数字が出てきたこと、しかも、その好況が2カ月連続で現れたことなどにより、市場参加者にある程度のインパクトを与えました。
ところが、こうしたことはトレーダーも想定していたようで、発表直後は円安ドル高に振れたようですが、結果としてはリバウンドし、最終的には為替への影響は限定的だったという見方が強いようです。
このような状況の中、今、市場参加者が注目しているのはアメリカの利上げがいつ行われるのか?という事です。
トレーダーの多くは、「雇用統計の結果が為替に影響を与える」というよりも、「雇用統計の結果が、アメリカの利上げに影響し、利上げになると為替が大きく変動する」と予想していることから、雇用統計の結果に注目していたのです。
それほど注目される米利上げはいったいどのようなものなのでしょうか。
アメリカの金利の利上げが為替に与える影響とは
日本の政策金利は日本銀行が決めていますよね。一方、アメリカの政策金利はFOMCというアメリカの中央銀行が決めています。FOMCとは、FRB(連邦準備制度理事会)の理事7名や連邦準備銀行の総裁5名で構成されている委員会のことです。日本銀行のアメリカ版と思っていただいて結構です。
そのFOMCが政策金利を決定する際には、アメリカの経済状態を慎重に分析し、「利上げタイミングで一番良いタイミングはいつか?」や「本当に利上げして大丈夫なのか?」を話し合っています。
その際に参考にする指標が雇用統計や失業率といった諸率いうわけです。
【注意】
雇用統計や失業率の結果が為替に与えるのは間違いありませんが、それは前回実績と比較して好転したり悪化したという結果で為替が変わるのではありません。雇用統計や失業率の結果が比較されるのは、市場の予想に対してです。
市場の予想よりも好転すれば、円安ドル高となり、市場の予想よりも悪化していれば、円高ドル安となる傾向にあります。
では、簡単に雇用統計や失業率が金利に与える仕組みを説明しますね。
雇用統計や失業率が金利に与える影響とは
- 雇用統計が悪化・失業率が悪化
- 企業が社員を採用できない財務状況
- 失業者は経済的余裕がないため、購買意欲(消費)が減退
- 消費が促進されず、経済が好転しない・悪化する
- 景気減退
- 金融緩和(利上げ不可・利上げ見合わせ)
このようなストーリーがイメージされることから、雇用統計や失業率が悪化すると、FOMCは利上げに踏み切れないという仕組みなのです。
もちろん、利上げ判断には様々な要素が絡み合い、雇用統計や失業率の悪化がダイレクトに影響することもないのですが、いずれにしても、ある程度の好況状態が確認できないと、利上げすることができないのは事実でしょう。
では、ここから米国金利の上昇が与える為替への影響を説明します。
米国金利の上昇が与える円ドル為替への影響
- 米国金利が上がれば、円安ドル高になる
- 米国金利が下がれば、円高ドル安になる
FX初心者はこれさえ覚えておけば取引は可能ですが、仕組みを理解しておく方が長いFX人生ではためになることがあるので、是非覚えておいてください。なお、この金利の動きは米国金利でも日本の政策金利でも同様の動きをしますので、今回は分かりやすく日本の政策金利を例に説明します。
日本の金利(仮に、10年国債)が現在0.1%であると仮定します。その金利が、2%に上昇したとしましょう。
するとどのようなことが起こるでしょうか。
おそらく、世界の投資家(今回の例ではアメリカの投資家)は、ドルで運用している商品を売却し、運用利回りが高くて安定している日本国債に運用資産をシフトしていきます。
ドルを売って日本円を買う
ドルを売るとドルが安くなり、円を買うと円が高くなります。つまり円高ドル安ですね。
【ちなみに】
為替の世界ではよく耳にする言葉である円キャリートレードとは、この反対の現象です。金利が低い日本円を借り、その資金を元手に高い金利の外国債券に資金を移管し、金利差で運用益を狙うというものです。
繰り返し言いますが、為替というのは様々な要素が複雑に絡みあいながら価格が決定されますので、金利が上がれば為替が動くと断定することは出来ません。
しかし、各国金利が為替に与える影響の基本的仕組みは上記の要素もあることから、今後核国の金利の動きが報じられた際は、為替の動向に十分注意する必要があります。
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