ベージュブックがFX市場へ与える影響度とは?過去チャートを交えて徹底検証!
経済動向を知るためには多くの経済要素を分析しなければなりません。経済に影響を与える要素は企業の生産活動や個人消費、雇用者の増加などなど、列挙すれば幾らでもあります。
これらの要素を分析して政策金利を決定するのがFOMCです。そして、このFOMCの議論のベースになる報告書が「ベージュブック」と呼ばれるものです。金利の変更が予想されている場合は、この「ベージュブック」の内容に目を通している理解が深まるでしょう。
この記事ではベージュブックがどのようなものか、為替相場にもたらすインパクトがどれくらいなのかを過去データなどを交えながらご紹介していきます。経済動向に高い関心を持っている人は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
ベージュブックとは
ベージュブックとは、アメリカの地区連銀経済報告書(英名:Summary of Commentary on Current Economic Conditions by Federal Reserve District)のことで、報告書の外観がベージュ色のためそのような名称となっています。
ニューヨークやボストンなど12地区の連邦準備銀行が各地区の経済動向をまとめた報告書で、各業種の雇用や消費の状況などが詳細に記述されたものです。
FOMC声明発表の2週間前の水曜日に発表されるため、FOMCと同じく年8回公表されることとなっています。金融政策決定の最高意思決定機関であるFOMCの議題では、このベージュブックが議論のベースともなるため市場では注目が集まります。
ただ、地域ごとに経済動向が異なるため内容には共通しない点も多く、それがFOMCの議論を難しくするケースもあります。
FOMCの非常任委員に選出されている地区連銀の報告書は、その後の政策金利に影響する可能性が高いので目を通しておくと、その後の流れが把握しやすいでしょう。
取り分け、前回のFOMCで政策金利の引き上げや引き下げに言及されていた場合は、ベージュブックの内容が大きな意味を持ってきますので内容には注意を払うべきです。
為替相場への影響度
ベージュブックが為替相場へ影響を及ぼすのはどのような時なのか、短期的中期的な視点からご紹介していきます。
短期的な相場への影響
為替相場への影響度という意味では、発表直後の短期的なインパクトはほとんどないと言ってよいでしょう。FOMCの議論のたたき台となることから、中期的な相場への織り込みとして扱われると見るべきです。
相場へ直接的な影響が少ないのは、報告書がはっきりした数値や指数などで公表されるわけではなく、文章で表現されていることにあるかもしれません。
数値であれば景況判断にそこまで大きな差異は見られませんが、文章となると人によって解釈が分かれる可能性があるからです。
また、地区によって経済動向に差があることも判断に迷いを生じさせる一因となっている可能性があります。12の地区連銀全てがはっきり好景気の判断をしていれば、何の問題もありませんがそのようなことはほとんどないでしょう。
実際には、3地区が景気拡大・4地区はやや減速・5地区は現状維持、などのように地区によって経済状況は異なるのが通例ですから、はっきりした判断がしずらいのが実際のところだと考えられます。
このようにトレンドが定まらない相場では、トレーダーそれぞれの思惑や駆け引きなどによる仕込みによって予期せぬ値動きを見せることもありますので、その点は注意しなければなりません。自分の中に根拠がないのであれば、そのような相場に乗せられることがないようにしましょう。
中期的な相場への影響
即座に市場には影響が出にくいですが、中期的にはインパクトがあると考えておいた方が良いです。それは、ベージュブックがFOMCの議論のベースとなるため、議論の行方を予想することが可能だからです。
特にFOMCで投票権を有する地区連銀の報告書には目を通しておくと良いでしょう。FOMCの政策金利は、7名のFRB理事と5名の地区連銀総裁の多数決によって決定されるからです。
これら5つの地区連銀のベージュブックの内容は、そのままFOMCでの議論の行方を左右する可能性が高いため、FOMC声明発表までの相場を緩やかに形成することになります。
以上より為替相場への影響は、短期的には少ないが、FOMC発表までの中期的には大きいと言えるでしょう。
過去チャートの値動きを検証
ここからは、ベージュブック公表時の過去チャートから為替市場への影響度がどの程度なのかをご紹介していきたいと思います。
※画像は全て、米ドル/円の5分足チャートを使用
【2016年7月13日】ベージュブック公表時のチャート
まずは、2016年7月13日のベージュブック公表時のチャートから見ていきましょう。発表前の段階から緩やかな上昇トレンドを形成しており、発表後もその流れを引き継いだような相場となっています。その後、しばらくしてレンジ相場のもみ合いへと推移していきました。
発表直後は5pips前後の値動き、その後も2時間で20pips程度の変動しかありませんでした。相場としてはほとんど反応せず、発表前の相場がそのまま進行したと受け取るのが自然でしょう。短期的な影響はほぼなかったと考えられるチャートです。
【2016年9月7日】ベージュブック公表時のチャート
続いて、2016年9月7日のベージュブック公表時のチャートを確認していきます。こちらは発表前に緩やかなダウントレンドから、発表後には方向感を失ってレンジ相場となっています。その後、時間の経過とともに再度緩やかなダウントレンドへと移っていきました。
具体的な動きとしては発表直後に3pipsほどの変動、その後も10pips程の範囲内でもみ合いが3時間程度継続する結果となりました。こちらも相場への影響はほぼなかったと考えが適切で、短期的なトレンドの方向性を示す材料とはなっていないかったことが窺えますね。
【2016年10月19日】ベージュブック公表時のチャート
最後は、2016年10月19日のベージュブック公表時のチャートです。こちらは発表前の段階から上昇トレンドが発生しており、発表後もその状態が継続した相場となっています。さらに、その後はもみ合いの局面となりレンジ相場へと移行していきました。
具体的な値動きは発表直後に3pips、その後も変動幅は最大でも20pips弱となっており市場へのインパクトはほとんどなかったと考えられます。
ベージュブック公表時の基本的な動き方
ここまで紹介してきた3つのチャートの傾向から、短期的な市場への影響はほぼないことが分かります。また、方向感の乏しさのために、しばらくするとレンジ相場に移行しやすいとも言えるでしょう。
ベージュブックをトレードに活かす際は、発表時の短期的な取引ではなく、FOMC発表までの中期的な仕込みに用いるのが賢明です。
まとめ
ここまで、ベージュブックがどのようなものか、為替相場にもたらすインパクトがどれくらいなのかをご紹介してきました。
この報告書がFOMC議論のベースとなっていること、政策金利決定に大きな影響を持っていることはお分かりいただけたことでしょう。
一方で、報告書の性質から市場への短期的なインパクトは小さく、公表時点でのトレードではあまり気にする必要がないこともご理解いただけたかと思います。
FOMC声明発表には影響がありますので、中期的なトレードをする際は内容に注意を払った上でエントリーすると良い結果が得られることでしょう。
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