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2009年ユーロ危機が為替相場へ及ぼした影響を考察

アメリカに次ぐ経済規模を誇るEUですが、これまで何度も経済危機に瀕してきました。取り分け2009年のギリシャ・ショックに端を発し、ヨーロッパ中が危機的状況になったユーロ危機は記憶に新しいでしょう。

ユーロは大幅に値下がりし、ヨーロッパ各国の国債に対する信用が著しく低下してしまいました。ユーロ危機はヨーロッパの金融システムそのものを揺るがした事件として、人々の記憶に刻み込まれています。

この記事では、ユーロ危機がいかにして引き起こされてしまったのかその原因と、それによって生じた為替相場への影響についてご紹介していきます。過去の大きな経済危機を学ぶことで今後のトレードに役立てたい人は、ぜひ参考にしてみてください。

ユーロ危機とは

ユーロ危機とは、2009年10月のギリシャ政権交代によって巨額の財政赤字が判明したことに伴って発生したギリシャ経済危機と、それに連鎖して南欧からユーロ圏、引いては欧州全体にまで拡大した広域の経済危機のことを指しています。

ギリシャで旧政権の財政赤字隠蔽が発覚してから、ギリシャ国債の格付けは下がり続け、世界的な株価の下落も始まりました。下落に歯止めがかからず、ギリシャは自力での経済再生は不可能と判断してIMF, EU, ECBのトロイカへ金融支援の要請を行いました。俗にいうギリシャ・ショックです。

ギリシャ・ショックについては下記記事でもご紹介していますので、合わせて参考にしてみてください。

関連記事ギリシャ・ショックで財産を失った人と大儲けした人

PIIGS(ピーグス)

ギリシャ・ショックから連鎖するようにして欧州各国でも債務危機が叫ばれるようになりました。取り分け危機的状況であったのが、アイルランド・ポルトガル・スペイン・イタリアでした。経済基盤の弱さが露呈したこれらの国々は、ギリシャと合わせて「PIIGS(ポルトガル:P、イタリア:I、アイルランド:I、ギリシャ:G、スペイン:S)」と呼ばれるようになります。

これは、2008年ごろから侮辱的な意味でよく使われていた「PIGS(豚:ポルトガル・イタリア・ギリシャ・スペイン)」にアイルランドを加えて拡張した言い回しになります。いずれにしても、EU圏のお荷物的な扱いとして金融報道では度々揶揄されてきました。

欧州ソブリン危機

ギリシャの経済危機から飛び火して欧州全体が危機に陥った「ユーロ危機」は、しばしば上記の5ヶ国にちなんで「PIIGS危機」と呼ばれることもあります。また、ギリシャ国債の格付け低下が欧州各国のソブリン債(政府関連機関が発行している債券)全体の信用不安を招いたことから「欧州ソブリン危機」とも呼ばれます。

ギリシャ経済の脆さをきっかけとして、次々に露呈し始めた欧州中の経済不安は広がり続けユーロも下落を続けることになりました。PIIGSの5ヶ国だけでなく、オーストリアやハンガリーなどでも深刻な経済危機が発生しておりヨーロッパ全土の問題として捉えられるようになっていったのです。

スペインはギリシャ以上に問題が深刻であるとされており、不動産バブルの崩壊と債務総額が激増したことで、2012年以降のスペイン経済危機にまで発展する非常事態を招くこととなりました。

ユーロ危機の原因

ギリシャ・ショックに端を発したユーロ危機ですが、なぜEUの1小国に過ぎないギリシャの経済危機がヨーロッパ全土に影響を及ぼしたのでしょうか。

欧州通貨統合の矛盾

最大の原因は、欧州通貨統合というシステムにおいて、従来から問題視されていた懸念点が一気に噴出してしまったことにあると言えるでしょう。本来、適切な金融政策が実施できるのは為替の変動相場制があるからであり、統一通貨ではそれができません。

健全な経済では国内経済を為替レートを変動させることで調整メカニズムを働かせます。しかし、ユーロ圏内では統一通貨のためそれが放棄されており、国内価格や資本移動などによってのみ経済の調整が図られます。

もちろんEU各国は文化や経済規制などを独自に有していますので、このような状態では各国がそれぞれの異なる政治的圧力にさらされ、政府間での軋轢が起こりやすくなってしまいます。「PIIGS」と「ドイツ・フランス」はその分かりやすい構図で、救済される側と救済する側とで全く異なる政治的圧力が働いており、ユーロ圏政府間での交渉は暗礁に乗り上げつつあると言えるでしょう。

つまり、経済の規模も文化も政治も全く異なる国々による通貨統合という試みが、ヨーロッパ中から不安視され出したということです。

ドイツ・フランスによる投資

もう一つ大きな原因とされているのが、債務危機に陥っている「PIIGS」に対してドイツとフランスのマネーが大量に投下されているということです。

EU圏第1位と第3位の経済規模を持つ独仏のマネーフローが危険視されるということは、すなわち欧州全体のマネーフローが危険視されるということです。これがユーロ全体への信用低下に拍車をかけ、ユーロ危機の主要因となっています。

また、このマネーフローはそれぞれの国民に不信感を抱かせることにもなっています。ドイツ・フランス国民からしてみると「自分たちのお金が放漫財政をしている国々のために無駄使いされている」と考え、逆にPIIGSの国民からしてみると「自分たちの稼いだ金が債権国の金利で吸い取られている」と考えるようになっているのです。

EUそのものの存在意義に懐疑的になる勢力が増え始め、これが新たな金融危機を引き起こすことになるのではないかと懸念する声も多く聞かれます。

ユーロ危機がもたらした為替相場へのインパクト

ユーロ危機が為替相場に及ぼしたインパクトはどれくらいだったのでしょうか。ここでは、ユーロ/円の週足からユーロ危機前後の相場へのインパクトを見ていきます。

2009年10月~2010年12月までの一連の騒動

為替相場に影響が出始めたのは、ギリシャの政権交代があった2009年10月です。ここで、財政赤字が想定以上に膨らんでいることが政府により発表され、ユーロは少しずつ下落局面を迎えます。

そして、2010年1月に欧州委員会から財政不適切計上の指摘をされて以降は目に見えて下がっていきます。1月で対円で14円ほどの下落を見せます。さらに、2010年4月に自力での経済再建を諦め、トロイカへの金融支援要請をおこなってからは急激な下落となりました。1月でさらに20円ほども下落することとなったのです。

その後、ギリシャへの巨額の金融支援が決定しユーロも上昇局面へと移行するかと思われましたが、問題はギリシャだけではなく「PIIGS」に代表される自力での経済危機脱出が困難である国がEU内に多く存在することが明るみに出てしまい、2010年度の後半は1ユーロ105円~115円台のレンジで低迷することとなりました。

欧州のソブリン債は大部分が大幅に格付けを下げられ、ギリシャのGDP赤字比率も拡大修正されるなど、2010年度は明るい見通しが出ることはありませんでした。

市場はユーロ圏そのものに対して懐疑的な見方をしていたため、ユーロは長きに渡り低迷を余儀なくされました。この後のユーロ圏では、2011年のイタリア情勢の深刻化や2012年のスペイン危機など多くの財政問題につながってゆくこととなったのです。

今後のユーロ圏はどうなっていくか

ユーロ圏、欧州で起こった一連の経済危機は、政治文化経済全てが異なる国々による「統一通貨」という実験に対して、大きな波紋を投げかける結果となりました。ユーロ圏は全体でアメリカとほぼ変わらない経済規模ですので、ユーロへの不信は世界経済にも大きなダメージとなって襲いかかります。

ブレグジットに代表されるEU離脱の流れは、ヨーロッパ中で火種となってくすぶっています。今後EU存続の是非がヨーロッパでどのように議論され、EU各国の国民がどのような判断を下していくのか十分に注視していかなければなりません。

まずは、2017年4,5月のフランス大統領選の行方に注目しましょう。

まとめ

ここまで、ユーロ危機がいかにして引き起こされてしまったのかその原因と、それによって生じた為替相場への影響についてご紹介してきました。

ギリシャで起こった深刻な財政難は、実はギリシャだけではなく他のEU圏の国々の経済危機をも露呈させることとなりました。

本来であれば経済調整のメカニズムとして機能するはずの変動相場制がないことで、ユーロ圏の国々は政治的にも経済的にも複雑なかじ取りを求められるはずでした。それを怠っていた、若しくは軽視していた国々が「PIIGS」として現れてしまったのです。

EU全体への信頼を傷つけたユーロ危機で統一通貨の難しさが浸透し、今後EUはどこへ向かうのかトレードに関わる人は十分に注意していきましょう。ヨーロッパの重要イベントの際は、十分にファンダメンタルズ分析をして取り組むことをお勧めします。

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